TECHNOLOGY 加工技術
TECHNOLOGYシリコロイ切削とは
シリコロイとは高強度と耐食性を兼ね備えた特殊なステンレス鋼で、その優れた性能から様々な分野で利用されています。摩耗が少なく長寿命化に適していますが、加工が難しいという特徴があります。シリコロイは非常に硬いため、加工後の残留応力を気にしなければなりません。そのため製品の寸法精度を保つためには、高度な技術と経験が必要となります。
シリコロイは日本の研究者が長年に亘る研究の結果、世界で初めて強靭高珪素鋼のメカニズムを解明されて誕生した新素材です(日本鉄鋼協会誌、第28年・第9号「高珪素強靭鋼の誕生」、関西大学太田けい一名誉教授)。不屈の研究精神のDNAを継承しながら、現在の「析出硬化系高ケイ素シリコロイ」が誕生しました。
圧倒的な寸法精度(長期安定性)
寸法精度
サブミクロン(1μm以下)~
ナノメートルレベル(1/1,000μm)
極限の回転振れ制度
主軸回転振れ精度
0.1μm~0.05μm以下
研削仕上げによる高精度
同軸度・振れ精度
2μm以下
同軸度・真円度・円筒度
製品の歩留まり
(良品率)向上
装置の長寿命化
(メンテナンスフリー化)
加工の安定性向上と
コスト削減
高付加価値製品の
実現
ひとつの鋼で複数の特性を兼ね備えるオールラウンド型ステンレス「シリコロイ(析出硬化系)」。従来不純物として考えられていたケイ素(Si)を炭素(C)の代替として積極的に活用し、更に微細な金属間化合物を析出させることで、今までに考えられなかった新素材が誕生しました。
高負荷環境での摩耗やメンテナンス頻度にお悩みではありませんか?
SUS630、SUS420J2、SUS440C、ステライト、マルエージング鋼からシリコロイへの転換で得られる6つのメリット
変化の低減
改善
技術化
機能
耐食性
コストダウン
シリコロイの利点
ひとつの鋼で複数の特性を兼ね備える
長寿命化によるメンテナンスフリー化・トータルコストダウンに
→連続鋳造用ローラーなど悪環境下(耐熱・耐食・耐摩耗)の使用に
硬度と耐食性のバランスに優れる
今まで対応できなかったところに対応できる
→SUS440C、マルエージング鋼では耐食性不足、SUS630では硬度不足の場合に
低温の熱処理で高硬度化が可能(時効硬化特性)
焼入れの諸問題を解決・加工プロセスの改善に
→焼入れ時の歪み、焼割れ、寸法変化、酸化スケールの付着等の諸問題の解決に
熱処理設計の自由度が高い
・硬度の微調整が可能
・高周波熱処理による局部高硬度化が可能
・低温窒化・セラミックコーティング等の複合処理が可能
→用途に応じた硬度調整や複合技術の併用で高付加価値の創造を
シリコロイはニッチな新素材
・高機能化しやすく、新製品を開発しやすい
・他社との差別化商品をつくりやすい
→シリコロイの特長×貴社のノウハウで新製品を
シリコロイの種類
| 材質 | シリコロイA2 (析出硬化系ステンレス) |
シリコロイXVI® (析出硬化系ステンレス) |
アクシアZero3® (高強度析出硬化系ステンレス) |
|---|---|---|---|
| 硬度 | HRC49~55 | HRC50~58 | HRC54~58 |
| 強度・耐力 (引張強度) |
約1,000~1,700MPa級 | 約1,300~1,700MPa級 | 約2,000MPa級 |
| 耐食性 (塩水噴霧試験) |
優れる (SUS304~SUS630相当) |
非常に優れる (SUS630~SUS316L相当) |
非常に優れる (SUS630~SUS316L相当) |
| 熱膨張係数 (×10-6/℃) |
12.5 | 10.6 | 11.1 |
| ヤング率 (GPa) |
199 | 202 | 207 |
| 熱処理変形 寸法変化 |
極小 (低温熱処理で高硬度化) |
極小 (低温熱処理で高硬度化) |
極小 (低温熱処理で高硬度化) |
| 主な特徴・ メリット |
高硬度・高強度・高耐力と 高耐食性のバランスに優れる 耐摩耗性・耐カジリ性 |
高硬度・高強度・高耐力と 高耐食性のバランスに優れる 熱処理寸法変形・変化が極小 |
高硬度・高強度・高耐力と 高耐食性のバランスに優れる 小型化・軽量化が可能 |
| 主な用途 | 自動車・食品機械流体制御、 バルブ部品 |
半導体・液晶製造装置・医療機器・食品機械・EV関連製造ライン部品・航空・宇宙・エネルギー産業 | 半導体・液晶製造装置・医療機器・食品機械・EV関連製造ライン部品・航空・宇宙・エネルギー産業 |
※数値は代表値であり、保証値ではありません。使用条件・熱処理条件により異なります。
精密加工プロセス
STEP01 素材
- 素材の在庫状態ではシリコロイA2は過時効処理(OAG:650℃/AC)、シリコロイXVI®は溶体化処理が標準になります。
- 特にシリコロイA2を高硬度化する場合は予め固溶化熱処理を行う必要があります。
- 過時効処理の状態で時効硬化熱処理(450~490℃)を実施しても高硬度化しませんのでご注意下さい。
STEP02 固溶化熱処理
- 固溶化熱処理の目的は加工性に富むマルテンサイトを得ることと、時効硬化熱処理の準備をすることです。
- 析出硬化系ステンレスを高温加熱後に急冷すると、時効硬化元素を固溶したマルテンサイトが得られ、このマルテンサイトは比較的軟らかいため切削加工が可能です。
- 保持時間は肉厚に対して、1インチ0.5~1時間程度を実施することが多いです。
- シリコロイXVI®の固溶化熱処理品でも急冷効果でより特性を向上させる場合に再固溶化熱処理をする場合もあります。
熱処理条件例
- 1050℃±20℃/急冷
- 大気熱処理の場合:1050℃±20℃/WQ
- 真空熱処理の場合:1050℃±20℃/ガス冷
STEP03 一次加工
- 固溶化熱処理後の硬度はシリコロイA2はHRC33~37程度、シリコロイXVI®はHRC37~40程度となり、切削加工が可能です(プリハードン鋼相当)。
- 製品によっては仕上加工まで行う例もありますが(精度があまり重要でない場合)、特に精密部品では研磨代を残した粗加工を行うことが多いです。
STEP04 時効硬化熱処理
- 固溶化熱処理によって生成した析出硬化元素を過飽和に含有するマルテンサイトに、時効硬化熱処理によって金属間化合物を析出させ、硬さと強度を上昇させます。
- 高硬度化のメカニズムは、固溶化によって無理に溶かしこまれた析出硬化元素が時効硬化熱処理により粒子分散強化し、結晶を歪ませ転位を動きにくくすることにあります。
- この温度帯の時効硬化熱処理では応力除去もできると推測されます。
熱処理条件例
- シリコロイA2の場合:480℃±10℃×6~8hr/AC
- シリコロイXVI®の場合:(1)200℃×2hr/AC、常温に冷却(2)460℃±10℃×8~12hr/AC
STEP05 仕上加工
- 時効硬化熱処理により若干の寸法変化及び歪みが生じる可能性があり、特に精密部品では研磨加工等の最終仕上を行う例が多いです。
- 大気熱処理で時効硬化熱処理を行う場合、テンパーカラー(薄い酸化スケール層、色調:金色~茶色)が付着します。
- テンパーカラーの除去が必要な場合、研磨加工等で除去する場合もあります。しかしながら後加工を実施しない箇所は完全に除去できない場合もあります。
- テンパーカラーの付着防止をご希望される場合は、真空時効処理を実施することお薦めします。
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シリコロイ切削が使用される製品例
次世代半導体・
微細電子デバイス製造
ナノメートル制御の精密露光・エッチング。耐食性ガスに耐え、熱変形や振れによるズレを排除し、数十ナノメートルの位置ズレを防止。
EV用バッテリー(二次電池)の
超精密スリット・塗工
極薄電極シートの高速・均一カッティング。電解液による腐食と摩耗を防止し、数ミクロン以内の寸法精度を維持。バリ発生を防ぎ、良品率を向上。
精密医療機器・
インプラントの加工
生体適合材料(チタン等)の超精密削り出し。クリーン環境での水溶性クーラント加工でも錆を防ぎ、高精度と表面品質を長期維持。
宇宙航空・光学レンズの
金型加工
車載カメラ・センサー用レンズの超精密金型。特殊クーラント下での高硬度材の長時間加工における、振動・回転振れを極限まで抑制。
水素エネルギー・燃料電池(FCV)
関連製品
水素セパレーターの超微細プレス・切削。強膨環境と高い加工圧に耐え、微細な穴形状(寸法精度)を長期安定的に維持。
導入事例
| 用途・品名 | 材質 | 熱処理・特殊技術 | 従来材 | 形状の一例 | 必要特性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 射出成型用シャフト | シリコロイA2 | 時効硬化熱処理 (H900相当) |
SUS630、他 | Φ40~Φ90 | 耐食性、硬度、強度、耐摩耗性 |
| 医療機器用スピンドル | シリコロイ XVI® |
時効硬化熱処理 (H900相当) |
SUS420J2 | Φ20~Φ25 | 耐食性、硬度、耐摩耗性 |
| シャフト | アクシア Zero3® |
時効硬化熱処理 (H900相当) |
SUS630、他 | Φ22、Φ30 | 耐食性、硬度、耐摩耗性、疲労強度 |
| ノズル | シリコロイ XVI® |
時効硬化熱処理 (H900相当) |
SUS304、 SUS316L、 SUS630、SUS440C |
Φ40~Φ90 | 耐食性、硬度、強度、耐摩耗性 |
化学薬品工場への導入事例
化学薬品工場の撹拌機では薬液による腐食と摩耗の両方が発生し、部品の劣化が進行します。そこで、耐食性と耐摩耗性を兼ね備えた「シリコロイXVI®」へ材質を変更し、長寿命化とメンテナンスコストの削減を実現しました。
導入前の課題
撹拌器を使用
-
薬液により耐食性は確保できるが、硬度が低く摩擦が発生
-
摩擦の進行により撹拌効率が低下し、交換頻度が増加
-
定期的な部品交換が必要となり、メンテナンスコストが増大
当社のご提案
(HRC55〜58)
-
高硬度で優れた耐摩耗製を発揮
-
耐食性にも優れ、薬液環境に対応
-
オールラウンド型ステンレスで安定した性能を実現
安定稼働とコスト削減を実現!
導入後の効果
材拌機を採用
-
耐食性を維持しながら摩擦を大幅に低減
-
撹拌効率が向上し、部品交換頻度を削減
-
メンテナンス工数・コストを削減
FEATURE第1サイトのシリコロイ切削の特徴
シャフトスピンドルでの加工に使用しており荒加工後、熱処理を施し研削とハードターニングにより表面粗さRa0.4、公差±0.002の製品に対応しております。
CASES加工事例
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※生産特性上、1個のみのご依頼についてはお引き受けできない場合がございます。予めご了承下さい。

